執筆担当
古山 文義(Fumiyoshi Furuyama)
中小企業診断士、社会保険労務士、ITコーディネータ
プロフィール
1977年生まれ 千葉県出身
大学卒業後、大手SIerに就職し官公庁系の大規模システム開発に従事。
在職中に社会保険労務士資格、中小企業診断士資格などを取得し独立。
現在は多摩地方を中心に経営コンサルタントとして活動中。
趣味はゴルフ
第3回では評価エラーの代表として「ハロー効果」を説明しましたが、まだまだあります。評価をする人は自身がこれから紹介するエラーを発生させていないか確認してみましょう。
<今回のテーマ>
人事評価エラーの例
1.中心化傾向
評価が中心に寄ってしまうエラーです。5段階評価をすると、なんとなく“ふつう”の3に評価してしまうことです。これは業績や能力に関係なく真ん中に寄ってしまいます。評価者が評価することへの自身のなさが影響しているともいわれます。
2.極端化傾向
中心化傾向とは全く逆で、5段階評価でいうと5か1しか付けないような評価エラーです。評価に明確な差をつけようと極端な評価になります。評価は2択ではなく、被評価者の実情をしっかり捉えて適切な評価をしなくてはなりません。
3.寛大化傾向
被評価者からのクレームなどを恐れて、甘めに評価をつけるエラーです。甘く付けておけば被評価者も悪い気はしないだろうという配慮とも考えられますが、評価業務の正当性が保てなくなります。また被評価者へも実際の能力より上に評価することで能力開発の妨げになる可能性もあります。
4.厳格化傾向
寛大化傾向と逆に全員に対して評価が厳しくなる傾向です。自身が評価する部署への叱咤激励のつもりかもしれませんが、正しい評価とは言えずこれも評価エラーです。
5.逆算化傾向
最終的な評価があらかじめわかっているのでそれから逆算して評価をつける(調整する)エラーです。社内で昇格や昇給の人数が決まっている場合は、どうしても相対評価になり、結果的に一人ひとりの評価もある程度逆算して行われていることも無いとは言えません
6.論理誤差
評価は事実に基づいて評価されなくてはいけません。しかしながら評価者の論理だけで評価を下してしまうエラーです。例えば、出身校や入社前の活動などから勝手に能力の高低を判断してしまうようなことが当てはまります。
7.対比誤差
評価者が自身の能力を基準に考えて、自分ができることをやれない者には低い評価をし、自分ができないことをやれる者には高い評価をつけるエラーです。評価者自身の得手不得手で評価が異なってくるエラーです。
8.親近効果
評価者に共通点をもつ(同郷、出身大学が同じ、好きなプロ野球チームが同じなど)者に対して評価が甘くなるエラーです。
9.アンカリング
最初に評価した者を基準として次以降の者を評価することです。
以上、ハロー効果を併せて10個あります。ご自身がエラーを発生させないように、もう一度確認してみましょう。
今回は目標管理について解説します。目標管理制度は、組織目標と個人目標を統合させ、職務・能力気銀―人事考課から、個々の社員の日々の業務にまで結びつけて業績評価を可能にする有効な手段となります。
<今回のテーマ>
1.必須目標課題の例
2.目標設定シートの例
【管理職】
・組織目標達成度
・新規業務の開発
・業務変革度
・不測事態への対応
・部下指導育成実績
・モラールアップ
・リーダーシップ発揮
【事務職】
・業務能率性
・納期管理
・経費管理
・予算進捗管理
・情報収集、分析
・業務の標準化
・情報システム化
・イメージアップ貢献度
・業務改善
・新規企画提案
・他部門への貢献度
・報告書作成、提出
これは会社側である程度絞り込み、本人が取り組むべき課題を指南するのもよいでしょう。
目標設定シートには以下のような項目を設けます。
【目標】(業務重点/能力開発)
目標の概要を記載します。
例:外注部品納期遅れの改善
【達成すべき水準】
具体的な数値目標を記載します。
例:遅延率2%から1.5%に抑える
【目標達成方法・スケジュール】
どのような方法で、どのような予定で達成するのかをより具体的に示します。
例:B氏と合同で進める。外注先C社との打合せで指導し、1か月単位で遅延率を測定する。
【ウエイト】
全ての目標に対する当該目標の重みです。
例:30%
【難易度】
本人の職位や経験と比較し難易度を示します(高・中・低)。
達成すべき水準を定量化することで、評価が明確になります。また目標達成方法・スケジュールで定性的な評価も可能となります。まずは定量化することで抽象的な目標を防ぎましょう。
今回も前回に引き続き人事評価について解説します。
<今回のテーマ>
具体的な考課の練習をしてみよう
以下の内容について、妥当であると思うものには○、妥当でないと思うものには✗、どちらとも言えないには△を付けてください。
例題1
性格は人事考課にとって重要な要素である。
例題2
はじめに全体からの人物評価を行ってみることが必要である。
例題3
自分より長い経験を積み、専門知識がより豊富な部下については評価を高くするべき。
例題4
知識が豊富であるということは、理解する能力が高いと同義である。
例題5
効果を決定するときは,部下それぞれの将来を考慮した上で行う。
例題6
考課結果は、本人にすべて伝えなくてはならない。
例題7
懇親会の席で大いに盛り上げて、チームの士気を高めたことは評価に値する。
例題8
上司や先輩から終業後に誘われても付き合うことがない人は評価を低くすべき。
例題9
直接現在の担当業務とは言えないが、仕事に広く関連している環境問題に自らよく勉強している場合、評価を高くするべき。
例題10
仕事は結構早いが慎重さに欠けるところがあり、後で無駄になってしまうことが複数回見受けられた場合は評価を低くするべき。
それでは解説です。
例題1 |
✗ |
性格は無関係 |
例題2 |
✗ |
先入観は禁物である |
例題3 |
✗ |
評価は経験だけでは無い |
例題4 |
✗ |
異なる意味である |
例題5 |
✗ |
対象期間で判断する |
例題6 |
✗ |
全てを伝える必要はなし |
例題7 |
✗ |
人事考課としては対象外 |
例題8 |
✗ |
業務時間外は無関係 |
例題9 |
△ |
業務との関連性次第 |
例題10 |
△ |
業務特性による(スピード重視など) |
いかがでしたか?
評価は評価される側にしても、する側にしても大変な作業です。
しっかり準備をしての望むことが重要です。
前回に引き続き人事評価について解説します。
<今回のテーマ>
1.評価方法
2.考課者訓練
一般的には
自己評価→上司との評価面談→管理者での評価結果の整理→社としての評価の決定となります。
①自己評価
自身で目標に照らし合わせどこまで達成できたかの結果を記します。またその結果を客観的に確認できるような情報も準備すると良いでしょう。
②評価面談
自己評価の結果を持って上司との評価面談を実施します。ここでは、目標の達成度合いをアピールします。評価者はどの妥当性を考慮し、必要であれば質問や証拠の提示を求めることもあります。
③管理者での評価結果の整理
各部署で評価面談を実施し、従業員各人についての評価結果を上長単位でまとめます。その後他の部署の上長とともに評価結果の整理を行います。これは、上長によって極端な評価の良し悪しを発生させないことにも繋がりますし、社として部署横断的に評価レベルを統一する狙いがあります。
④社としての評価の決定
前述の③を基に、社として従業員一人ひとりの評価を決定します。他の部署との関係で、上長の評価より上がったり、下がったりする場合もあります。
⑤評価のフィードバック
全社的に評価を整理・決定したら、本人にその評価結果を伝えましょう。そして昇給や昇進などのきっかけにするのがよいでしょう。
評価をする人(考課者)を訓練する必要があります。従業員ごとに評価が違い過ぎたり、考課者間で差が発生することをなくすためです。一般的な評価を歪めるものとして、「ハロー効果(思い込みによる誤差)」「寛大化傾向(全体的に甘い評価になる)」「中心化傾向(全員普通になる)」があります。
ハロー効果とは、一部の印象が全体の印象と勘違いしたり、全体的な印象が一つ一つの作業の評価になることです。
例えば、最近すごく良い仕事をしたことが印象に残って、今年度はずっと良い仕事をしているように評価してしまう。また、いつも遅刻してくる人をすべてにおいて適当な仕事をすると勘違いし、たとえ良い仕事をしても評価につながらないようなことです。
今回は人事評価について解説します。
<今回のテーマ>
1.目標管理制度と目標設定
2.業績評価と能力評価と情意評価
・目標管理制度
人事評価を行うためには、評価する項目が必要となります。基準となるものが存在すればよいのですが、多くの企業には評価する項目がありません。そこで一般的には、従業員自身で目標を設定し、その目標への到達度を評価項目として採用することがあります。
・目標設定
目標設定は、個人で行いますが、会社に直接関係ない個人的な目標を掲げても会社として意味がありません。このため個人の目標に至るまでには、会社方針(目標)をブレイクダウンした部内方針(目標)があり、その部内方針(目標)を達成するために、自身は何をすべきかを考えて個人目標を設定します。
①会社方針(目標)
会社全体の目標です。
②部内方針(目標)
評価対象従業員が所属する部署の目標です。
③個人目標
本人の目標です。部内方針を受けて自身の役割に置き換えて設定します。
④目標の設定方法
評価する項目となりますので、いつまでに、なにを、どのようにするかを明確にし、どうすれば目標が達成したことになるかを明確に示しましょう。
良い例:3月末までにお客様満足度を5%向上させる。
悪い例:お客様満足度を上げるためにお客様のニーズを把握する。
悪い例だと、どのようなことをすればニーズを把握したことになるのか客観的に判断しづらいです。
① 業績評価
一定期間の目標達成度及びその過程(プロセス)を評価します。
社内の売上目標・顧客獲得数の達成状況などがわかり易い例です。
② 能力評価
職務を通じて身につけた能力を評価します。被評価者の置かれている立場や作業内容によって求められる能力も異なります。
主任として求められている技術水準に達しているかなどです。求められる技術水準を予め決めておくと円滑な運用ができます。
③ 情意評価
簡単に言えばやる気(意欲)です。勤務態度や職務に対する意欲についての評価です。
評価者にもよるかも知れませんが、会社のムードを良い方向に向けてくれるような行動なども評価されるべきです。
しかし役職が高くなるとこの情意評価の割合は低くなります。
今回は賃金の決め方について解説します。
<今回のテーマ>
1.賃金の決め方と将来的な問題
2.賃金テーブルと昇給
中小企業の中には、賃金の決定方法が明確ではなく、社長の一存で決まるケースも少なくありません。
本来であれば、あらかじめ決まった賃金テーブルの中で、自身の等級に従って基本給が決まるべきですが、賃金制度自体の導入が遅れている事業者や制度は導入したが運用ができていない事業者も多く存在します。
そのような場合、将来的な問題として以下のようなケースが考えられます。
①事業承継
社長が変わった瞬間に問題が発覚するパターンです。社長との人間関係で決まっている場合に多く発生します。
②不平不満の噴出
従業員同士で額面を比較するような関係ができあがったときに、他人と比較して自身の賃金が気になりだし、根拠の説明を求める場合があります。
このような状況にならないうちに、納得性のある賃金制度をきちんと定義することが重要です。特に現経営者が健在なうちに安定した運用まで行えるようにしておきましょう。
賃金テーブルは、役職と等級ごとに基本給を決めているものが一般的です。
この他にも、より細かく基本給を分けることもできます。
基本給―――年齢給
職能給
業績給
年齢級、職能給(前述の賃金テーブルのこと)ごとに賃金テーブルを作成し、従業員がどこに当たるかを評価し、決定します。
業績給は前年の業績にどの程度貢献したかを元に算出されるものです。
このように、給与と言っても多くの要素があり、その事業者が何を重要視するかによって規程も大きく変わります。
次に昇給です。
①タイミング
昇給のタイミングは1年に1度の事業者が多いようです。就業規則に定めておきましょう。
②基準
なにに該当すると昇給するのか、もしくは昇進するのかなども基準を決めておくと非常に有効です。人事評価制度と一体的に運用していくと良いでしょう。